台北金馬映画祭で4冠達成のヒューマンドラマ
門脇麦が人妻役で台湾映画初出演、シャオ・ヤーチュエン監督作『オールド・フォックス』6月公開
2024.02.09 11:00
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2024.02.09 11:00
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)がプロデュースを手掛け、シャオ・ヤーチュエンが監督を務める台湾・日本合作映画『OLD FOX(原題)』が、邦題『オールド・フォックス 11歳の選択』として6月14日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国公開されることが決定した。
バブル期の到来を迎えた台湾。11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、父(リウ・グァンティン)と二人で台北郊外に暮らしている。自分たちの店と家を手に入れることを夢見る父子だったが、不動産価格が高騰。リャオジエは現実の厳しさと、世の不条理を知ることになる。そんなリャオジエに声をかけてきたのは、“腹黒いキツネ”と呼ばれる地主のシャ(アキオ・チェン)だった。他人にやさしい父と違い、他人なんか見捨てろと言い捨てるシャ。果たしてリャオジエは、どちらの道を歩んでいくのか。
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)は1989年『悲情城市』でヴェネツィア国際映画祭グランプリ、2015年『黒衣の刺客』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。小津安二郎への敬愛から『珈琲時光』を製作し、昨年10月には引退を発表した。そして本作を監督したシャオ・ヤーチュエンは、そんな侯孝賢監督作品の助監督を務め、台湾ニューシネマの系譜を受け継ぐ俊英だ。これまでの作品全てのプロデュースを侯孝賢が務めており、本作は侯孝賢がプロデュースする最後の作品。昨年の東京国際映画祭でワールドプレミア上映されると、人生の選択肢を知って成長していく少年と、彼を優しく見守る父の姿に心打たれる人が続出。2023年の第60回台北金馬映画祭で監督賞、最優秀助演男優賞(アキオ・チェン)、最優秀映画音楽賞、衣装デザイン賞の4冠を達成した。
主演のリャオジエを演じるのは、『Mr.Long ミスター・ロン』などで日本でも知られている日台のダブルで、台湾では神童と呼ばれる天才子役バイ・ルンイン。そして日本でもスマッシュヒットを記録した『1秒先の彼女』のリウ・グァンティンがW主演としてリャオジエの父親役に扮し、慎ましやかに支え合いながら生きる父子役を演じている。リャオジエに影響を与える“腹黒いキツネ”(オールド・フォックス)と呼ばれる地主のシャ役には、台湾の名脇役アキオ・チェン。シャの秘書役に『怪怪怪怪物!』のユージェニー・リウ。そして、門脇麦が経済的には恵まれているが空虚な日々を生きる人妻・ヤンジュンメイを演じ、初の台湾映画出演を果たした。
解禁された本ポスターは、オールド・フォックスの横顔のシルエットの中に父の働くレストランの厨房で宿題をするリャオジエと働く父の姿、そして2人並んで自転車に乗る父子の慎ましやかな日常の姿が収められており、オールド・フォックスという存在に翻弄される父子が表現されている。そして「ただ、夢をかなえたかった──」というコピーも。
併せて予告編も解禁。1989年バブルに揺れる台湾を舞台に父と慎ましく暮らす11歳の少年リャオジエ。彼の夢は父と家を買い、亡くなった母の夢だった理髪店を開くことだが、時代の波は父子に無情な現実を突きつける。家を買えると思った矢先、不動産価格は2倍に高騰、少年は残酷な現実を知る。貧しさ故にいじめにも遭い、不公平を知ったリャオジエは遂にオールド・フォックスと出会う。オールド・フォックス(腹黒いキツネ)はリャオジエが住む家の家主の呼称で、高級車を何台も所有し、不動産バブルで儲けまくっていた。
オールド・フォックスは「不平等を利用し、強者になれ」とリャオジエに生きる術を教えた。リャオジエはオールド・フォックスの高級車でいじめっ子たちをギャフンと言わせ、力を知った。同時に「君の父は負け組だ」と人のいい父を蔑まれた。リャオジエには全てが刺激的だった。オールド・フォックスへの憧れと、父を馬鹿にされた悔しさに挟まれ、リャオジエは初めて父に反抗的な態度を取り「どんな大人になりたい?」という疑問を突きつけられる。「知るもんか!」と泣きながら自転車を走らせるリャオジエ。さらにはリャオジエの父と門脇演じるヤンジュンメイの大人のキスシーンやリャオジエ父子が自宅の壁に線を引き身長を測る心温まるシーン、そして「私みたいになりたいか?」とオールド・フォックスに問われ岐路に立たされたリャオジエの姿が描かれる。
果たしてリャオジエが選ぶ未来とは?心に深く刺さる予告とともに、本作に出演する門脇麦、監督のシャオ・ヤーチュエンよりコメントが到着している。
門脇麦/ヤンジュンメイ役 コメント
台湾映画でしか感じられない色彩や湿度、空気感がどうしたって強烈に昔から好きで、これまで沢山の台湾の作品に触れてきました。
台湾映画に出演できるなんて信じられない!と夢心地で現場に向かい、スクリーンに映る自分を観ても、やっぱり信じられない!と夢心地で、幸福すぎる時間を過ごさせていただきました。
その場にただ居さえすれば全てが成立する現場の空気、監督の言葉以上に何かが伝わる眼差し、今思い出しただけでも胸が震えるような、そんな経験をしました。
日本での公開、とても嬉しいです。1人でも多くの方にこの作品が届きますように。
シャオ・ヤーチュエン監督 コメント
他人を思いやることですべての社会問題が解決できると思うほど、私も単純ではありません。しかし思いやりがなければ、社会的な格差と矛盾は拡がっていくことでしょう。では現代社会に向き合い、私は父親として、思いやりが人間としての基本であることを、子供にどう説明したものでしょうか?「オールド・フォックス」このストーリーは、私が子供から十年以上も受け続けた問いが発端となっています。かつて私は両親から価値観を与えられました。しかし世界は変わっていきます。私自身にも新たな学びが必要です。それによって私は自分の子供たちに、変わっても良いもの、変えてはいけないものが何なのかを、伝えられるのではないでしょうか。