問題児たちが映画撮影を通して「自分自身」と向き合う
カンヌ映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞、映画『最悪な子どもたち』12月公開決定
2023.10.07 11:00
©Eric DUMONT - Les Films Velvet
2023.10.07 11:00
昨年の第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリに輝いたフランス映画『Les Pires(原題)/The Worst Ones(英題)』が、邦題『最悪な子どもたち』として12月9日(土)より全国公開されることが決定し、ポスタービジュアルと場面写真が解禁された。
本作はフランス北部の荒れた地区を舞台にした映画が企画され、地元の少年少女を集めた公開オーディションが開かれることから始まる物語。選ばれたのは異性との噂が絶えないリリ、怒りをコントロールできないライアン、心を閉ざしたマイリス、そして出所したばかりのジェシーの4人のティーンエイジャーたち。出来上がったシナリオは彼ら自身をモデルにした物語だった。なぜ問題児ばかりが主役なのか?監督の狙いとは?住民たちが訝しむなか、波乱に満ちた撮影が始まり予想外の展開が訪れる。
原題タイトル『Les Pires(原題)/The Worst Ones(英題)』にあるように、演技未経験の“最悪”な子どもたちを配役した映画撮影の様子を捉えた本作では、「映画の登場人物」を演じることで「自分自身」と向き合うことになった主人公たちが、はじめての体験に格闘し、違う世界に飛びこむことで少しずつ変わっていく。現実とフィクション、映画制作のプロセスと物語の間を絶え間なく行き来する子どもたちの、瑞々しくリアルで奇跡的な演技が光る作品となった。
監督を務めたのは、キャスティングディレクターや演技コーチとして数千人以上の若者と接してきた新進監督コンビのリーズ・アコカとロマーヌ・ゲレ。2人は公開オーディションを題材とした短編『シャス・ロワイヤル』(2016年)で監督デビューし、セザール賞短編賞にノミネート。その後、長期にわたる取材やキャスト探しを経て初長編となる本作を完成させた。
かねてより「なぜ映画というジャンルが、過酷な環境で生きる子どもたちに惹かれカメラを向けようとするのか?」と関心を持ったことが企画の始まりで、世代や文化の違いから生じるハプニング満載の展開で観客を楽しませると同時に、映画が個人やコミュニティにもたらす影響、作り手の倫理、社会格差といったテーマを鋭く突きつける。
主人公の子ども4人を演じるのは、実際に北フランスの撮影地近くの学校や児童養護施設でのオーディションに参加し、選ばれた演技未経験の子どもたち。作中では、はみ出し者のレッテルを貼られた主人公たちが、映画の現場でさまざまな壁にぶつかりながら自身の新たな可能性を発見していく過程を全身で体現する。一方、アート系映画監督の役に扮するのは『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』『オーバー・ザ・ブルースカイ』などでの名演で知られ、劇作家・映画監督としても活躍するヨハン・ヘルデンベルグ。芸術表現の追求と大人の責任の間で揺れる複雑なキャラクターを人間味豊かに演じている。
また、本作はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリ(最高賞)受賞後、第15回アングレーム映画祭(フランス)最優秀作品賞受賞、第20回アリス・ネッラ・チッタ ローマ国際映画祭(イタリア)最優秀女優賞(リリ役/マロリー・ワネック)受賞、第26回アメリカ・フランス映画祭(アメリカ)最優秀新人作品賞受賞、第6回平遥国際映画祭(中国)観客賞受賞、そして世界20ヵ国以上の映画祭に選出された。
各紙レビューでは、「子供たちが経験する撮影体験を興味深い視点から描いている。刺激的で、時にダークな可笑しさがある作品」(Deadline)、「最高で素晴らしい映画。ワイルドな子供たち4人を監督自身が賢明にキャスティングした結果だ」(le Parisien)、「本物の素晴らしさと魅力を備えた若い俳優たちが、信じられないほどの感情の高まりを表現している」(ELLE)、「演技未経験の子どもたちに、劇場スクリーンも、観客の心も、揺さぶられる!」(TELERAMA)など高い評価を受けている。