ヒップホップで社会を生き抜く! 第22回
エンタメ業界だけじゃない?ラッパーたちのセカンドキャリアを紹介!
2023.07.18 17:00
ジョー・バドゥン/50セント/カミリオネア
2023.07.18 17:00
ヒップホップは多くのドアを開いてくれる。特にラッパーから俳優に転向する人は多く、リュダクリス、メソッド・マン、ジョーイ・バッドアス、コモンなどのアーティストがテレビや映画に出演している。メソッド・マンは以前、インタビューで「ラッパーは嘘が上手く、演技も上手いから俳優に向いている人が多い」と語っていた。ジェイ・Zやディディなどもラッパーからビジネスマンに転身し、音楽活動以上に自身が所有するブランドやビジネスで稼いでいる。「ヒップホップで社会を生き抜く!」の第22回ではヒップホップに必要な存在感、知識、クリエイティビティを活用し、音楽以外のキャリアに進んだラッパーたちを紹介したい。
ポッドキャスターとして活躍
近年のラッパーのセカンドキャリアとして最も熱いのはポッドキャスターだ。ポッドキャストのホストに転身したラッパーとして最も有名なのは、ジョー・バドゥンだろう。彼は2003年にリリースされた「Pump It Up」が大ヒットし、東海岸を牽引する次世代のラッパーとしての頭角を表し始めていたが、ラッパーとしてのキャリアはその後伸び悩むこととなった。しかし彼は持ち前の辛口トークが人気を博し、Complex誌の『Everyday Struggle』のホストとして第2のキャリアをスタート。その後自身のポッドキャスト番組『The Joe Budden Podcast』をスタートし、YouTubeの登録者数は124万人を超えている。
また、ヒップホップ業界で今最も勢いを見せているポッドキャスト/トークショーが、ラッパーのN.O.R.E.がホストを務める『Drink Champs』だ。N.O.R.E.は1996年にCapone & Noreagaのメンバーとしてデビューをし、ソロで「Superthug」「Oh No」「Nothin」「Oye Mi Canto」などの曲がヒットしたニューヨーク出身のラッパー。彼は2016年にDJ EFNと共にゲストとお酒を飲みながらトークを交わす番組『Drink Champs』を開始し、ラッパーだけではなく、ジョージ・クリントンやアイズレー・ブラザーズなどのレジェンドを積極的にインタビューしリスペクトを示す姿勢も評価されている。
近年この2人に影響されてポッドキャストを始めるラッパーは多く、音楽活動から引退はしていないが、最近ではリル・ヨッティが自身のポッドキャストを開始すると発表している。
テレビ業界での活躍
冒頭で説明したように、俳優として活躍するラッパーは多いが、テレビの裏側で活躍するラッパーも増えている。50セントは2014年に5thアルバム『Animal Ambition』をリリースした後、テレビ番組制作に力を入れるようになる。自身がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた犯罪ドラマ『Power』は、6シーズンにわたり放映され、放送局「Starz」で最も人気な番組の一つとなった。
また、近年ドラマ制作の分野で頭角を現しているのがチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローバーと、リル・ディッキーだ。ドナルド・グローバーがプロデューサーと主演を務める『Atlanta』は人気シリーズとして数々のアワード賞を受賞している。リルディッキーがプロデュース、脚本、主演を務める『DAVE』は今年シーズン3が放映され、半自伝的なコメディ作品として高く評価されている。
エンターテイメント以外の分野でも
ジェイ・Z、ディディ、ドクター・ドレーなどのビジネスアイコンが投資で富を築いたことは周知の事実だが、天才ラッパーのNasがベンチャーキャピタルを立ち上げ、100社以上のテック企業に投資してきたことを知っているだろうか? 彼のポートフォリオにはDropbox、Genius、Lyftなどの企業があり、投資家としても成功していることがわかる。
2005年にリリースされた「Ridin」が400万枚の大ヒットとなったカミリオネアも投資家として成功した1人だ。彼は2000年代に投資に興味を持ち始め、IT系のイベントに参加するようになり、2015年にベンチャーキャピタル企業Upfront Venturesに加入した。彼が150万ドルを投資したMakers Studioという企業はディズニー社に5億ドルで買収され、カミリオネアは2千万ドルのキャピタルゲインを得た。
テキサス出身のサウスのパイオニア的存在、UGKのバン・Bもエンターテイメント以外の分野で活躍している。彼は2011年からテキサス州ヒューストンの難関校、ライス大学でヒップホップと宗教について講師を務めている。
上記で紹介した以外にも多くのラッパーたちが様々な職種で活躍している。ウィル・スミスはラッパーから俳優に転向した先駆け的な存在であり、2000年代に数々の大ヒットを飛ばしてきたリル・ジョンは、今もDJとして世界中でパーティーを盛り上げている。レーベルを自分で初めてビジネスマンになる人も多く、今ではケンドリック・ラマーも自身の会社で映像制作なども行っている。ヒップホップで培ったクリエイティビティやメッセージを伝える能力を駆使し、他の分野に活動を広げるラッパーは今後も増え続けるだろう。