2022.12.01 21:00
シンガーソングライター”MICHAELA”を中心としたアート集団・TOGITO(トギト)が、新曲「Stay」を12月2日(金)に配信リリースすることを発表した。
今作は、制作中の楽曲が完成を迎えた日に別のアイデアが出たことをきっかけに、その場でプロデューサーのKITANOTAとセッションを開始。ビートを打ち込み、コードを決め、メロディと歌詞を付けて2時間ほどで完成したという。90’sのUK R&Bを彷彿とさせるブレイクビーツのビートを歌いあげるフローは、R&B、ジャズ、ロックと多様なジャンルを内包し、MICHAELAの音楽へと昇華されている。
また、TOGITO初のオフィシャルライナーノーツも公開された。未だ謎に包まれているアートコレクティブ・TOGITOの中心にいるMICHAELAに迫り、彼女の音楽活動の根底にあるものを覗くことができる内容になっている。
TOGITO オフィシャルライナーノーツ
2022年3月にMIYA TERRACEからデビューしたTOGITO(トギト)。このTOGITOとは単独のアーティストではなく不特定のメンバーから成るアートコレクティブであり、その中心にいるのがシンガーのMICHAELA(ミカエラ)だ。彼女以外のメンバーは常に流動的であり、デビューして1年にも満たない期間の中でも変化しながら、急激に進化を遂げている。
彼女が生まれる以前にロックバンドでドラムを叩いていたという父親と、ジャズやR&Bを愛する母親のもとで育ったというMICHAELA。彼女が幼い頃からさまざまな音楽に自然に触れていたことは、自らアーティストとして表現する側に立つようになっていくための大きな原動力になっていたことは間違いない。独学でギターの練習を始め、コロナ禍が始まった時期に、「なんとなく」でインスタライブにて弾き語りでオアシスなどのカバーを披露し、その映像が偶然にもMIYA TERRACEのレーベル担当者の目に留まることになる。彼はアーティストとしての存在感と歌唱力の高さを感じたと同時に、チューニングの合っていなかったギターが「不協和音っぽく響いて、ブッ飛んでる」と大きな衝撃を受け、MICHAELAとアーティスト契約を結ぶことを決意。そして、TOGITOが誕生した。
2021年末から自身のYouTubeチャンネルにてジャミロクワイ、レディオヘッド、さらに彼女自身が敬愛する女性シンガー、ジョルジャ・スミスのそれぞれ楽曲のカバーを発表。さらに翌年、2022年に入ってからはYouTubeチャンネルにてロシア語にて歌うオリジナル曲(デモ)が初めてアップされ、奇しくもロシアによるウクライナ侵攻が始まった約2週間後にデビューアルバム『P・O・N』がリリースされた。プロデューサーであるIZPONによるディレクションのもと、ロック、ジャズ、クンビア、ポップス、ノイズなどさまざまな音楽的要素が混ざり合いながら、さらに日本語、英語、ロシア語、スペイン語といった多言語によるリリックで表現された『P・O・N』。その4ヶ月後に発表されたEP『Déjà vu』にはIZPONともう一人、KITANOTAがプロデューサーとして加わり、TOGITOにとっての新たな章がスタートする。2022年秋以降にリリースされたシングル「September」、「by my side」、そして最新曲である「Stay」はいずれもKITANOTAがプロデューサーを務め、MICHAELA自身の言葉を借りるならば「全部自分の思い通りに、自分の中に浮かんだものをそのまま出せた曲」であるという。ドラム、ベース、ギターなど少ない音数によって構成されたトラックの上で、どこかブルージーで影がありながらも美しく響くボーカルが乗り、日本語、英語、ロシア語で紡がれたリリックが心地良く耳の中に入り込む。「by my side」の後半部分や「Stay」から感じるタイトなブレイクビーツ感は、ヒップホップやR&Bからの影響かと思いきや、「今までそうじゃない曲ばかり作っていて飽きたから、逆のものをやっただけ」と彼女は否定する。
音楽はもちろんのこと、小説、映画、アート、さらに周りの人々など、さまざまなものからインスピレーションを得ているというMICHAELAであるが、彼女自身それがどのようなきっかけや流れで、自らの作品に反映されているのか明確には分かっていないように見える。しかし、そんな無意識かつ無自覚なところは実は彼女の大きな魅力でもある。自分が興味を惹くものはなんでも貪欲に吸収し、子供の頃に通った絵画教室で好きになった絵に関しては、今では独学で習得したポーリングアートが自らの楽曲のアートワークで使用されている。ギターだけでなくジャズピアノを弾きたくてピアノを習い始め、今、一番好きな楽器だというベースに関しても熱心に練習を重ねる。それら全てがMICHAELA、そしてTOGITOが作り出す作品の糧となっている。
おそらく来年にはTOGITOとしての2ndアルバムがリリースされるだろうが、MICHAELA本人も含めて、どのような形の作品になるかは誰にも予想が出来ないだろう。エリカ・バドゥやAwichのような「女性の強さを感じられるアーティストが好き」という彼女であるが、彼女ならではの価値観とスタイルで理想の女性像を提示するかもしれないし、ド直球のR&Bやディープハウスなど彼女自身が好きでありながら曲としては表現できてこなかったジャンルにも挑戦したいという気持ちも伺える。彼女の無意識かつ無自覚がどのような素晴らしいアルバムを完成させるのか? 今からワクワクが止まらない。(ライター:大前 至)