2022.09.15 12:00
2022.09.15 12:00
何回落ちるのか。何回落ちれば受かるのか。私は一生免許取得に辿り着けない地獄にいる。
一発試験は難しいと聞いた。聞いてはいたが出来ないものなどこの世には存在しないと思った。ましては、私は誰よりも負けず嫌いであり、頑張り屋さんであり、めげずに踏ん張る力を持っていると自負している。私は私を褒めながらここまでやってきた。しかしどうだろう。何回落ちるんだろう。何回試験を受けて何回試験に落ちるんだろう。私はこれでも私を褒められるだろうか。自分が試されている。何があっても褒めてきた。そうして自分のモチベーションとやらを思いっきり上げてきた。ここまで保って来たのだ。飽き性で落ち込みやすい自分と付き合ってきたんだ。しかしどうだ。どこまで落ちればいい。落ち込む隙も無いくらい、物理的に落ちている。試験という試験に、落ちている。流石にこれだけ落ちることもないだろう。試験場ではちょっとした有名人になっているだろうと思う。連日試験を受けに来る派手な赤髪の女「マツナガ」として少しくらいは話題になっていることだろうと思う。それか何か?みんな落ちているのか?みんな同じメンバーか?受けているのは毎回同じメンバーなのか?いやそんなわけがない。「あ、あのひと前回もいた〜!あ、どもども(照)一緒に頑張りましょうね、えへへ」のアイコンタクトをまだ一度だって私は誰とも交わしていない。私はそんなタイミングが訪れても良い頃だと思っているのに。誰1人見たことのある人間に出くわさない。見たことのある人間で言えば、試験官の警察官のおじさまくらいだ。毎回同じ方が試験の説明をしてくれる。試験の説明すらもはや覚えてきた。どうせそのおじさまにも、「ああまたあの派手な赤髪のマツナガがいる」って思われているんだと思う。きっとそうだ。いいんだ。私はそんなこと思われてもなんでも毎回真剣に試験を受けている。受けているのに、落ちている。怖い。こんなにやる気があって、ガッツもあって、頑張り屋さんの派手な赤髪マツナガさんは今日も試験に落ちている。じゃあ何か?私以外のみんなは合格しているのか?今日も誰かが試験を受けて、今日も私以外のみんなが合格しているのか?どうなってんだ。そんな気がしている。どうなってんだよ。私以外誰も再試験の再再試験の再再再試験を受けていないのか。そうなるな。どうなってんだ。私の運転。こうなってくると不安だろう。みんな私という人間が怖くなってきている頃だと思う。さぞかしエゲツナイ運転をする派手な赤髪女なんだと、みんなそう思っていることと思う。でもね。試験官のおじさまはみんな口を揃えて言うんだ。「もったいなかったね」うん、どの辺がどのように。そしてみんな続けてこう言うんだ。「次は受かりますよ」うん、次って一体いつだ。次というものの概念が覆されている。何がどうなっている。「安全確認、S字クランク、寄せも、出来ている」そう言った後、みんな決まってこう言うんだ。「もったいない」何が何が何で?!もったいないだけで3回も試験に落ちる派手な赤髪、他にいますか?!どうなってるんだ私の運転。私の運転、どうなってるんだ。試験用の運転をしなくてはダメらしい。技術を見ているのではなく、ちゃんとどこかで減点されているらしい。明日もまた、練習場で練習してくる派手な赤髪マツナガ。先生も、びっくりだ。これだけ、やる気みなぎる元気のいい出来損ないの生徒が過去ひとりでも居ただろうか。それでも私は自分を褒める。「こんなに元気に不合格の紙をもらう派手な赤髪他にいないよ」
地獄でも何でも、私は進んでゆく。ミラー、ウインカー、目視。地獄、よし。