2022.09.12 09:00
2022.09.12 09:00
稲垣吾郎と新垣結衣が出演、岸善幸を監督に迎え、作家・朝井リョウの小説を原作にした映画『正欲』が2023年に全国ロードショー公開される。
原作となった小説は、2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、2013年『何者』で直木賞を受賞した朝井リョウが作家生活10周年で書き上げた渾身の一作。家庭環境、性的指向、容姿など様々に異なった”選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写しながら、人が生きていくための推進力になるのは何なのか?というテーマを炙り出す衝撃的なストーリーで第34回柴田錬三郎賞を受賞した。朝井は「小説家としても一人の人間としても、明らかに大きなターニングポイントとなる作品です」と語っており、2021年3月に発売されるやいなや「この衝撃は読んでみないとわからない」「もう読む前の自分には戻れない」と読者から大きな反響が起こった。
同作品を映画化するのは、『あゝ、荒野』(2017)、『前科者』(2022)などを手がけた監督の岸善幸と、原作を大胆に再構築しながら演出の可能性を拡げていく脚本家の港岳彦。このタッグで、生きていくための原動力が「当たり前」とは違う形である人たちの人生を映像化する。
横浜検察庁に務める検察官であり自分の力でマイホームを持ち妻と子を養う寺井啓喜(てらい・ひろき)役は、『半世界』(19/阪本順治監督)、『ばるぼら』(20/手塚眞監督)、公開を控える『窓辺にて』(22/今泉力哉監督)など精力的に映画出演を行う稲垣吾郎が挑む。広島のショッピングモールで契約社員として働き、特殊性癖を持つことを隠して生きる桐生夏月(きりゅう・なつき)役を、大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』や映画『劇場版コード・ブルー-ドクター・ヘリ緊急救命-』(18/西浦正記監督)、『GHOST BOOK おばけずかん』(22/山崎貴監督)などに出演する新垣結衣が演じる。
あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということ。人間が本当の意味で「生きていく」とはどういうことなのか。尊厳はどこにあるのか。その大きくつかみようのない絶望と希望の狭間に挑んだ同作。
小学校不登校の息子が世間から断絶されてしまう可能性を恐れる寺井と、自ら世間との断絶を望む夏月が、いつ、どこで、どのように交わっていくのか…。生きることと死ぬことが目の前に並んでいるとき、生きることを選ぶきっかけになり得るものをひとつでも多く見つけ出したい。そんな想いをどう昇華させていくのか。映画は現在撮影中で、10月下旬にクランクアップを予定している。
制作決定に伴い、各キャスト・監督・原作者よりコメントも到着した。
稲垣吾郎 コメント
脚本を読み終えた時、この作品に関われる事を嬉しく思いました。難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフの皆様と共に丁寧に演じていきたいと思います。
新垣結衣 コメント
原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました。それは、「何が正しいか」とかそういう単純なものではないような、でも実はとてもシンプルなことのような気もしました。考え続ける事、想像し続ける事をいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたらと思っています。岸監督とは初めてご一緒しますが、初顔合わせから親身に役についての相談などを聞いてくださり、とても心強く、感謝しています。撮影では、自分なりに、夏月達が生きる世界を必死に生きたいと思います。
監督・岸善幸 コメント
原作の衝撃と感動がずっと消えません。朝井さんの“視点”が生み出した登場人物たち、その感情をどう表現するべきか、模索が続いています。稲垣吾郎さん、新垣結衣さんをはじめとするキャストの皆さんとの対話を重ねて、少しずつ輪郭が浮かび上がってきたところです。人と人のつながりを描こうと思います。大切なのに、難しい、つながり。世界から「普通ではない」と片づけられてしまう人たちの、歪みのないつながりを描こうと思います。
原作・朝井リョウ コメント
言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。
映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものが沢山映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。
そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています。